Wi-Fi 中継器設置の注意点と限界

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UnsplashのTechieTech Techが撮影した写真

 Wi-Fi ルーターから端末までの距離が遠く、ネットが不安定だったり速度が出ないような場合の解決策としてよく挙げられるのが、中継器の設置です。

 中継器を設置することで、電波の届く距離を延ばすことができ、これによって、ネットワークの速度や安定性が改善することも多いです。これが、大きなそして唯一のメリットです。

 ですが、中継器ゆえの限界もあります。
 いくら頑張っても、本来的な仕組み故に、ルーターの近くで通信するのと同じレベルにまで改善できないことも多いということです。(もちろん遜色ないレベルまで効果がある場合もあります)
 今回は、その辺りのことを整理してみました。

 前回の記事でも書いたように、Wi-Fi の速度改善は結局は試行錯誤するしかなく、それは、中継器も然りなのですが、ある程度知識を持っておいた方が、試行錯誤するにしてもあたりをつけやすいと思いますので、中継器のそもそものデメリットや気を付けるべき点などについて解説します。

 前回記事「Wi-Fiの基礎 これだけは知っておいた方が良いこと」もご参照ください。


中継器を選ぶ際のポイント

形状、タイプ

 中継器の中にも様々な形のものがあります。コンセント直差し、アンテナが出っ張っているものや、ルーターの中にも中継器としても使えるものもあります。
 コンパクトで見た目にも邪魔にならならいのは、コンセント直差しのアンテナ内蔵タイプです。設置も簡単ですし。 ただ、電波の受信感度や飛びは、他のタイプに劣る可能性があります。

 何を優先するかですが、元の回線速度が速くない、そこまで速度が必要無い、ということなら邪魔にならないコンパクトなものでも十分だと思います。

規格、ストリーム数

 中継器も機種によって、対応している規格(Wi-Fi5や6など)やストリーム数に違いがあります。

 規格は、基本的には、ルーターにそろえるのが望ましいです。

 ルーターの規格を上回るものを設置しても、勿体無いだけです。場合によっては、むしろルーターの買い替えの方が必要かも知れません。例えば、ルーターがWi-Fi5なのに中継器をWi-Fi6対応のものにしても、Wi-Fi5でしか繋がりません。
 逆も然りです。ルーターよりも古い規格の中継器だと、ルーターの性能を発揮できません。

 ストリーム数は、中継器として売られているものは現状ではほとんどが2ストリーム以下です。ルーターを中継器として利用する場合は4ストリームのものを選ぶことも可能です。

 ストリーム数が多い方が、理論上の速度は速くなりますが、ルーターが2ストリームなのに中継器を4ストリームにしても4ストリームの速度は出ません。
 また、子機(端末)が1ストリームで、同時に1台しか繋がないのであれば、中継器をストリーム数の多いものにしてもあまり意味はありません。要はどんな使い方をするか、どこまでのことを求めるかによります。
 ルーターなども含めたストリーム数については、あらためて記事にしたいと思います。

デュアルバンド同時接続対応

 メーカーによって、デュアルバンド同時接続ハイスピードモードなど呼び方は様々ですが、2.4GHz5GHzの2つの帯域を同時に使用して速度の低下を抑える技術です。

 この点は後程説明しますが、デュアルバンド同時接続に対応したものを選んだ方が良いです。
 効果のほどは、やってみないと分からないのですが、そもそもこの機能が無ければ試すこともできませんから。


設置場所

 中継器を利用する際の一番のポイントは設置場所だと思っています。

 丁度いい感じの場所を見つけることができるかどうか。

 中継器はその名の通りWi-Fiの電波を中継するためのものですから、ルーターから離れたギリギリ電波が届くような場所に置いても、受け取る電波が微弱過ぎれば効果はありませんし、逆にルーターに近過ぎて、子機から離れてしまっても駄目です。

 また、親機(ルーター)、中継器、子機(端末)間のそれぞれの接続について、2.4GHz帯、5GHz帯をどのように組み合わせて使うかによっても、最適な設置場所は変わってきます。

 コンセント直差しタイプは、設置場所が限られてきますが、それでもあれこれ試行錯誤して、一番安定して速度が出る場所を探すしかありません。

 単に距離だけでなく、家具の配置壁やドアの位置など様々な要因で変わってきますので、ともかく、あれこれやってみましょう。


中継器の限界(デメリット)

中継器を使うと速度が半減?

 いくら中継器を設置しても、ルーターの近くで直接接続するとき以上の速度、安定性が得られるわけではないのは当然のことながら、そもそも、ルーターを介して接続すると、その仕組み上、速度は半減」してしまいます。

 どういうことかと言うと、中継器は、同じチャンネルを受信と送信で交互に切り替えて通信を行います。このため、理屈上出るはずの速度に比べて半分の速度しか出ないことになります。

 もちろん、中継器を使わない場合に比べて「半減」するわけではなく、本来出せるはずのスピードより「半減」するという意味です(その意味でカッコつきの半減です)。
 ですが、電波が届く距離が延びることによる改善効果を、速度の「半減」が打ち消してしまい、中継器を使ってもあまり効果が無いという場合もある、ということです。

 これを解消するために、「デュアルバンド同時接続」あるいは「ハイスピードモード」などと呼ばれる、親機(ルーター)と中継器、中継器と子機(端末)をそれぞれ別の周波数帯で同時に接続できる仕組みが生まれ、これに対応した機種が増えています。(最近の機種の多くはそうだと思います)

 イメージとしては、下図のとおりです。
 下図では、ルーターと中継器を2.4GHz、中継器と子機(端末)を5GHzで接続することで、速度が「半減」するのを防いでいます。
 もっとも、あくまでイメージですので、「同時接続」でこの通り本来の速度が維持されるとは限りませんし、環境によっては「同時接続」の方が遅くなるという場合もあります。

出典:株式会社バッファロー

中継器のジレンマ(デュアルバンド同時接続のデメリット)

 2.4GHz帯と5GHz帯とでは、理屈上は5GHz帯の方が高速です。
 ですが、5GHzだけを使って中継器を間に介すると、上で書いたように速度が「半減」してしまいます。

 一方でこれを避けるために、「デュアルバンド同時接続」「ハイスピードモード」を使用するならば、2.4GHzを使わざるを得なくなります。2.4GHz帯はそもそも5GHz帯よりも速度が遅く、電波干渉を受けやすいです。
 つまり、2.4GHz帯の通信がボトルネックになる可能性があります。

 ここら辺は、実際にやってみないと何とも言えない部分です。

 実際に、「デュアルバンド同時接続」を使うよりも、5GHz帯だけでつないだ方が高速、という例も散見されます。
 5GHz帯だけを利用する場合は本来出せるだろう速度よりも半減し、ルーターの近くで直接接続するよりも速度は低下します。けれども、この位なら十分という場合も多いですし、「デュアルバンド同時接続」を使ってもむしろ遅くなるのであれば、仕方ありません

中継器の設置が効果を発揮する条件

 もちろん、「デュアルバンド同時接続」を使えば、中継器を介しても、ルーターの近くで直接接続するのと遜色ない速度が出る、という場合もあります

 5GHz帯、2.4GHz帯ともにボトルネックになる要素がない、という場合、つまり、中継器の設置場所を含めて、環境的に、5GHz、2.4GHzともに必要十分な速度が出るような場合は、「デュアルバンド同時接続」は効果を発揮します。
 つまり、もとのネット回線の速度にもよりますが、2.4GHz帯の接続でも十分な速度が得られる場合は、ということになります。

 逆に言うと、元のネット回線が非常に高速で、2.4GHz帯の接続では十分な速度が出ない、というような環境で中継器を利用する場合は、一定の速度低下は避けられない、それなりの速度改善が得られれば、それで満足しましょう、ということになるかと思います。


結局

 身も蓋も無い言い方になりますが、結局は、あれこれやってみるしかない、ということです。

 ただ、闇組にやっても混乱するだけなので、2.4GHz、5GHzの電波状況を含めて、設置場所はどうか、「デュアルバンド同時接続」は効果はあるのか、ストリーム数の多い機種に交換した方が良さそうか、いっそルーターを高性能なものにするべきか、などを考えていくことになるかと思います。

 このように、中継器の設置は様々な要素が絡みますし、そもそも速度が半減する仕組みの問題もあるので、中継器の設置はお勧めしない、それよりもルーターを良いものにすべき、という意見の方もいらっしゃいます。

 ちなみに、我が家の場合は、もともとのインターネット回線が遅いということもあり、2ストリームのルーターに、中継器(2+1ストリーム)を介して、この回線で望み得る限界に近い速度(有線接続に近い速度)が出ていますので、中継器の設置は非常に効果的であるという状況です。
 ただ、「デュアルバンド同時接続」(ハイスピードモード)を使用しているので、電子レンジが作動するとほとんど速度が出ない、というのが唯一の難点です。

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