今回はWi-Fi ーインターネット固定回線の無線LANー のお話です。
私もWiFiの規格くらいは意識していましたが、ストリーム数、MIMO、帯域幅などについては、あまり意識してきませんでした。「その辺は、ルーターやPCの側で適当に最適化してくれるんじゃないの」というくらいに思ってました。
残念ながら、そうはいきません。先日、ふと思ってルーターの設定を変えたところ、ネットの速度が大きく向上しました。
つまり、ある程度はしくみを分かっておかないと、使えることは使えるけど思ったほどスピードが出ない、なんてことになります。
その辺のお話をできるだけ専門的にならないように書きたいと思います。
知っておくべきポイントとしては、WiFiの規格(バージョン)と周波数帯、ストリーム数とMIMO、帯域幅 です。 順番に見ていきましょう。
WiFiの規格(バージョン)と周波数帯
WiFiの規格とは、「IEEE 802.11n」や「IEEE 802.11ac」というアレです。「11n」や「11ac」と表記されることもあります。
そして、この名称がややこしいということで、最近ではWiFi4(11nのこと)やWiFi5(11acのこと)という名称も付けられています。
WiFiは、2.4GHzと5GHzの2つの周波数帯を使いますが、規格によって、対応している周波数と、対応していない周波数がある、ということも覚えておいてください。
当然、新しい規格ほど高速に通信できます。下の表を参照ください。

ただし、これらはあくまでも、その規格としての理論上の最大速度です。
実際の速度は、ルーターの設置場所や障害物の状況などの環境に左右されますが、それ以前に最大速度を制限してしまう要素があります。
それが後に説明する「ストリーム数」と「帯域幅(チャンネル幅)」です。
そしてもう一つ大事なことは、その規格で通信するためには、親機(ルーター)側だけでなく、子機(PCやスマホなど)側もその規格に対応していなければなりません。
例えば、ルーターがWiFi6対応であったとしても、PCが対応していなければWiFi6では通信できません。
ただし、WiFiの規格は、同じ周波数同志ならば下位互換性があります。さっきの例で言うと、親機(ルーター)のWiFi6は、2.4GHz、5GHzどちらにも対応しているので、PCがWiFi5に対応していれば、5GHz帯のWiFi5で繋がります。
また、例えば、ルーターがWiFi5対応の場合、WiFi4以前の規格にも対応している製品がほぼすべてですので、2.4GHz帯を使いたい場合には、子機が対応していればWiFi4で繋げます。
子機側の対応が必要であるというのは、規格だけではなく、ストリーム数や帯域幅についても同じです。規格が揃ってないとまずいというのは直観的にもわかりやすいですが、ストリーム数も帯域幅もそうだというのは見逃しやすいので、要注意です。 この点はまたストリーム数のところで説明します。
ここで、周波数の話が出たので、それぞれの特性について少し触れておきます。
2.4GHzは、障害物に強く、遠くまで電波が届きます。一方で、電子レンジや家電製品、Bluetoothなどでも使われる周波数帯のため、電波干渉によって通信が不安定になったり、速度が低下する場合があります。
5GHzは、電波干渉を受けることが少なく、後で説明する帯域幅も広いので、2.4GHzよりも高速通信が可能です。逆に、障害物に弱く、電波の届く距離が短いというデメリットがあります。
できれば安定して高速な5GHzで繋ぎたいところですが、親機と子機の設置場所や距離、位置関係などによっては、2.4GHzを選んだ方が安定する場合もあります。
帯域幅(チャンネル幅)
WiFiは、20MHzの幅に区切られたチャンネルのうちの1つを選んで通信を行います。
WiFi4(11n)以降、複数のチャンネルを束ねて通信する技術(チャンネルボンディング)が導入されました。これにより、2.4GHzでは40MHz、5GHzではさらに80MHz、160MHzの帯域幅で通信することが可能となりました。
この帯域幅は、道路のイメージで言うと、道幅です。道幅が広いほど大きな車両が通れるように、帯域幅が広いほど一度に大量のデータをやり取りできる、つまり高速に通信できます。
一方で、帯域幅が広がるほど、近隣の無線LAN通信との干渉が起きやすくなります。WiFiアナライザーなどのアプリで確認すると、特に2.4GHz帯は、隣近所の無線LANの電波が自分の家にもたくさん入りこんいます。
帯域幅は、ルーターの設定によって変更できます。子機にも設定があるものがあります。
この辺の話は、また改めて書きたいと思います。
ストリーム数とMIMO
ストリーム数とはアンテナの数です。と言っても、物理的に見えているアンテナの本数ではなく、同時のいくつの通信を行えるかという意味です。
ルーターの性能表記などで、2×2とあれば、送信で2つ、受信で2つのアンテナがあるということで、これを2ストリームと言います。
そして、複数のアンテナで同時に通信を行う技術をMIMO(マイモ)と言います。
MIMOには、SU-MIMOとMU-MIMOの2種類があります。
SU-MIMOは、1台の子機と複数のアンテナを通じて通信を行う技術です。道路のイメージで言うと車線が増えるという感じでしょうか。車線が多いほど多くの車(データ)が通れますので、高速に通信できる、と言うことになります。
ただし、親機と子機がともに対応していなければ、速度は上がりません。例えば、親機(ルーター)が4ストリームであっても、子機が2ストリームであれば2ストリームで、1ストリームであれば1ストリームで繋がります。
つまり、子機が対応していなければ、いくら高性能なルーターに買い替えても思ったほど効果がない、ということになってしまいます。
次に、MU-MIMOは、複数のアンテナを使って、複数の子機と同時に通信する技術です。
MU-MIMOに対応していない場合でも、複数の子機を親機に繋ぐことはできますが、実際の通信は順番に行われていて、子機からすると順番待ちのタイミングが発生していることになります。つまり、MU-MIMOを使う方が効率的に通信ができます。
MU-MIMOは親機が複数のアンテナ(ストリーム数)を持っていれば、子機がアンテナ1本(1ストリーム)でもMU-MIMOに対応さえしていれば、利用することができます。ただし、複数接続している子機のうち1台でもMU-MIMOに非対応の子機があれば、全体の効率が下がるということも起こります。
各要素の組み合わせによる最高速度
以上説明してきた、WiFiの規格、帯域幅、ストリーム数の組合せによる最高速度を表にすると以下のようになります。

少々ゴチャゴチャしていますが、同じ規格でも、帯域幅とストリーム数によって、最高速度が大きく異なっていることが分かると思います。
繰り返しになりますが
WiFiの機器を選んだりする場合、WiFiの規格(バージョン)や広告にある最大通信速度などは確認すると思いますが、帯域幅やストリーム数のことなどは気にしないケースもあるかと思います。いくら環境が良い(ルーターと子機が近くにあるなど)場合でも、対応している帯域幅、ストリーム数によっては上限速度が頭打ちになりますし、どれか一つ(子機や中継器)でも性能が低い機器があると、それに引っ張られます。
例えば、高機能なルーターを買っても、子機(PCやスマホ)側が1ストリームだった場合、期待した速度が出なかったりします。
また、中継器を使っている場合は、中継器にも同じこと(対応しているストリーム数など)が影響してきます。
そして、残念なことに、エントリースマホであったり、低価格のPCに内臓されてい子機・アダプタは、あまり性能が良くない(1ストリームだったり)ことが多いです。
次回は、これらを踏まえて、機器選びや設定の話などを少し書きたいと思います。
(2023.1.11 WiFiルーターを選ぶ際のポイントについて記事にしました。こちらをご覧ください)
コメント