Wi-Fiルーター 設定のポイント

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 WiFi関連の前回前々回の記事の続きになります。
 できればこれまでの記事を読んでから今回の記事をご覧ください。

最初に

 ルーターの設定画面を見ると、設定項目が非常にたくさんあって、馴染みのない用語ばかりが並んでいると思います。すべてを説明するとキリがありませんし、多くの項目はデフォルトのままでも問題ないものが多いです。
 今回は、これまでの記事で触れてきた内容を踏まえて速度と安定性にかかわる点についてポイントを絞って説明したいと思います。

 ですので、なぜかネットに繋がらないというようなときに見るべき点については割愛します。他の方の記事などご覧ください。機会があれば私も記事にしたいと思います。

 また、これまでの記事で散々書いてますので「くどい」と言われそうですが、規格や仕様は受け手側が対応している必要があります。ルーター側だけいくら設定を変えても受け手側(子機=PCやスマホなど)がそれに対応していなければ意味がありませんので(もちろんルーター側独自の設定のもありますが)、その点は御注意ください。

5GHz帯と2.4GHz帯の選択

 WiFi5、WiFi6対応ルーターの場合、5GHz帯の方が高速ですし、家電やBluetoothなどの干渉もないので、できれば5GHz帯で繋ぎたいところです。また、2.4GHz帯は電波の届く距離が長いことから、他の家のWiFi電波が入り込んで干渉をおこすこともありますので、その意味でも5GHz帯の方が良いです。

 なのですが、一方で5GHz帯は障害物に弱く電波が届く距離も短いので、ルーターと子機との位置関係や家の構造などによっては2.4GHz帯の方が早くて安定するという場合もあります

 同一の室内にルーターと子機があるという場合は問題ないと思いますが、別の部屋にあるような場合は実際に繋げて、設定をいじってみないと何とも言えないので、両方試してみて下さい。また、中継器を使えばうまく繋がる、速度が改善するという場合もあります。(中継器については別に記事にしたいと思います)

 5GHz帯と2.4GHz帯の選択を自動してしてくれる「バンドステアリング」という機能のついたルーターもあります。バンドステアリングとは、例えばNECのルーターのマニュアルでは「周囲の電波強度や対応帯域を判別し、2.4GHz帯と5GHz帯の混雑していない周波数帯へ自動で振り分ける機能」とあります。
 つまり、この機能をオンにしておけばルーターが勝手に判断して2.4GHz帯か5GHz帯のどちらかを選択してくれるというわけです。

 ただ、個人的にはこの機能は使わない方が良い気がします。
 自動的な振り分けが正しくないことも多いようですし、子機ごとの帯域の選択と設定は自分で把握しておく方が良いでしょうし、手動で設定して固定しておく方が接続も安定し速度も向上するという解説もあります。
 少なくともルーターの負荷を減らすという意味では(ルーターは多くの作業を同時にこなしている)使わない方が良いでしょう。

帯域幅(チャンネル幅)の設定

 前々回の記事でも説明しているように、WiFi4以降、チャンネルを複数束ねて通信を高速化する技術が導入されています。2.4GHz帯だと40MHz、5GHz帯だと80MHz、160MHzまで帯域幅を広げる設定が可能(ルーターの仕様によりますが)です。
 この設定を、バッファローでは「倍速モード」、NECでは「デュアルチャネル/クワッドチャネルオクタチャネル」と呼んでいます。

 帯域幅が広いほど通信速度の上限は上がりますが、他の電波の干渉は受けやすくなります。特に2.4GHz帯は、上でも書いたように他家の電波が入り込みやすいので、注意が必要です。

 ですので、帯域を広く取る設定にするか狭くするかは状況によることになりますが、実際の設定は、次に説明する「チャンネルの設定」とあわせて、設定をしてみて状態をみて試行錯誤するしかありません。

 なお、このときルーターの機種によっては、デフォルトの設定がこの帯域を広く取る設定を「使用しない」や「自動切り替え」になっていることがあるので、試してみる時は強制的に使う設定があればそうしてください。
 例えば、NECのAtermだと2.4GHz帯は「デュアルチャネル機能」の項目を「使用する(自動切替)」ではなく「使用する(優先)」に設定できます。5GHz帯は「クワッドチャネル」「オクタチャネル」ですが、「使用する」としても自動切り替えのモードしかないようです。

 私の家の場合は、2.4GHz帯は多くの電波が入り込んで干渉が起きているのですが、40MHzに広げた方が高速で、特に安定性にもほとんど問題無いようなので、2.4GHz帯は40MHzに広げて使っています。

チャンネルの設定

 これまでに説明したように、2.4GHz帯、5GHz帯それぞれ複数設定されているチャンネルの中から1つを選んで子機と通信を行うわけです。
 大抵のルーターにはこのチャンネルを自動で選んでくれる機能「オートチャンネルセレクト」があり、デフォルトではこの機能がオンになっていることも多いです。
 オンにしておけば、周辺の電波の状況などによって自動的にチャンネルを選んでくれます。バンドステアリングと違ってチャンネルを手動で設定するのは少々面倒ですし、オートのままで問題のないケースも多いようですが、環境によってはオートではうまくいかないケースもあります。

 オート設定はルーターの立ち上がり時にチャンネルを選んで、その後は変わらないタイプと定期的に見直すタイプがありますが、いずれにしてもオート設定だと安定しなかったり、速度が出ないというケースもあります

 その場合は手動でチャンネルを設定してみて安定するチャンネルを探すことになります。
 このときに参考になるのが、「WiFi Analyzer」などの周囲の電波状況を確認できるアプリ(ソフト)です。同種のものがいくつかありますので、探してみて下さい。

 これは、我が家の2.4GHz帯の電波状況です。
 周りの家のWiFiの電波がかなり入り込んできて重なり合っているのが分かると思います。
 こうしたものを参考に、他の電波の無い空いているチャンネル、あるいは強い電波の無いチャンネルに手動で設定するわけです。

 ルータの設定項目に、チャンネルを設定するところがあるので、そこで空いているチャンネルに設定しましょう。

 また、5GHz帯は、チャンネルの手動設定のやり方が2.4GHz帯とは違っていて、チャンネルを直接指定するのではなく、複数のチャンネルが属するグループ、具体的にはW52、W53、W56という3つのグループから一つを選ぶような形になっています。

 5GHz帯の場合は、他家の電波が入り込んでくることはあまりありませんが、W53とW56は気象レーダーや航空レーダーと干渉する場合があるので、W52に設定しておくのが良いとは思います(デフォルトの設定はW52になっている場合も多い)が、これも試してみて一番安定して高速なグループに設定してください。 

その他

マルチキャストレート

 マルチキャストレート(Multicast Rate)、マルチキャスト伝送速度 などと表記された項目の値を大きくするとWiFiの速度が速くなるという記事をよく目にします。

 そもそもマルチキャストとは、ネットワークでデータを送る方式の一つで、特定された複数の受け手に対して同一のデータを送る方法です。これに対して、一つ一つの受け手に個別にデータを送る方式をユニキャストと言います。
 マルチキャストは、送り手から出されたデータが複製されて届けられるので送り手、ネットワーク全体の負荷が低減するメリットがあり、テレビ会議動画配信などで利用されるとされています。
 ただ、動画配信と言ってもYouTubeなどは、視聴者のリクエストに応じて個別にそれぞれ異なる動画が送られるので、マルチキャストではなく、ユニキャストです。

 そして、マルチキャストレートとは、このマルチキャストにおいて1パケットあたりどの位の大きさのデータを送るかという(一度の送るデータの大きさを調整する)数値です。この値が小さすぎると配信される動画にネットワークの転送が追いつかないので値を調整する必要があるわけです。

 以上が私の理解なのですが、つまり、マルチキャストによって送られてこないデータを受け取る場合、例えばブラウザによるWebの閲覧やファイルのダウンロード、YouTubeの視聴などには関係のない項目のはずだと思うのですが、どうなんでしょうか。

 NECのルーター(Aterm)のマニュアルにも
「Wi-Fiでのマルチキャストストリーミングサービスを利用する場合は、伝送速度の値を変更する(上げる)必要があります。ご利用になるストリーミングサービスの伝送速度に合わせて設定値を変更してください。」とあります。

 なのですが、ネット上ではこの値を大きくしたら実際にWiFiの速度そのものが速くなったという記事もありますし、正直よく分からないところです。

 私自身は、ひかりTVなどのマルチキャストストリーミングサービスは利用していないので、この値はデフォルトのままにしています。試しに値を大きくしてみましたが、2.4GHz帯、5GHz帯ともに速度にさしたる変化はなく、むしろ値を大きくし過ぎると逆に速度が低下してしまいました。

送信出力

 送信出力が大きいほど電波は遠くまで届きます。
 その方が良いように思えますが、電波が飛び過ぎるのも問題はあります。

 自宅で他のアクセスポイントなどのWiFi機器を使っていたり、臨家でWiFiを使っている場合など、電波干渉を与える可能がありますし、電波が外へ駄々洩れと言うのはセキュリティ上もあまり好ましくありありません

 ルーターの設定項目に送信出力を調整する項目があるので、速度や安定性には直接関係しませんが、十分電波が届く範囲で大きすぎないように出力に調整しておくのが良いと思います。

最後に

 以上、WiFiルーターの設定について、一部のポイントについてですが、まとめてみました。少しでも参考になれば幸いです。

 ルーターのレビュー記事で、よく「最初は調子よかったけれども、使っているうちに不安定になった」と言うものを見かけますが、その原因は機器(ルーター)の不調ばかりでなく、周りの電波状況が変化して設定しなおす状態になっている、ということもあるんじゃないかなと思います。

 WiFiアナライザーなどは無料で利用できるツールですので、自分の周りの電波状況を一度も見たことが無いという方は、一度確かめてみて、自分のルーターの設定がどうなっているのか確認してみてはいかがでしょうか。
 ただし、現状でうまく繋がっているのにいじったらおかしくなったなどと言うことの無いように、設定をいじる場合は、その意味をよく把握して、元に戻せるようにしてお試しください。

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