投資をはじめる際の疑問

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 前回と前々回、それぞれ投資の総論投資の第一歩について記事を書きましたが、今回は投資を始めるにあたって疑問に思うだろうことについて、私の考えをまとめてみました。
 他の方々の意見とともに、参考にしてみて下さい。

Q 投資は景気が上向いてからの方が良くない?

 米国をはじめとして、これから景気後退が来るかもしれない、と言われています。
 米国の株は未だ下降トレンドです。
 これからもっと下がるかも知れないので、投資を始めるのはもう少し待った方が良いのでしょうか?

 株が下落しているときには、安い値段で買えます。景気後退と言われている時期こそ投資を始めるには良い機会とも言えます

 ですが、それよりも何よりも…。

 そもそも、長期積立投資は、先の株価の変動が分からないからコツコツ積み立てるという手法です。
 始めるにあたっても株価の動向を気にしていては、いつまでたっても始められません。
 長期の目線で見れば、目先の株価の変動は、必ず訪れる山や谷のひとつです。積立途中であっても、積立をはじめる時にも、それらに囚われず、機械的にコツコツ積み立てていきましょう

 株価の動きを見ながら売り買いするのは、総論でお話したサテライトの部分(長期積立とは別の資金)で、相場の知識を身に着けてやりましょう。

Q バランス型ファンドは駄目なの?

 投資信託やETFの中には、株だけではなく、国内外の債券や金などのコモディティも含めて、色々な対象に投資をする商品があります。様々なものにバランスして投資するので、バランス型ファンドと言います。株だけに投資するインデックスファンドよりもさらに分散が効いていて良いように見えますが、どうなのでしょうか?

 バランス型ファンドは、少なくとも長期積立投資にはあまり向かないと思っています。

 積立投資は時間分散によって価格変動を味方にする手法です。価格が上がったり下がったりしながら、長期のトレンドとして上昇が期待できるもの(全世界株や全米株のインデックス)に向いている手法です。他の商品を含める必要性はあまりありませんし、それらを含めることで逆にパフォーマンスが下がります。

 そもそも、バランス型の中身のバランス配分が適切かどうかと言う問題もあります。専門家が配分しているから大丈夫でしょう、と言うものでもありません。単純に8個の種別(国内外株、国内外債券など)に8等分している商品もあります。

 資産をどう配分し、どのタイミングで配分し直すか(それぞれの価格変動によってバランスが崩れていきますから)は重要です。適切な配分に分散投資し、定期的にバランスを見直す、そのリバランスによって利益が生まれる、と仰っている方もいます。

 いずれにしても、中身のそれぞれの投資対象の特性を理解せずに丸投げでお任せというのは、投資経験という意味でもよろしくないように思います。

 また、バランス型ファンドは多数の商品に投資する関係上コストが嵩むためか、信託報酬が高いものが多いです。

Q 債券投資は必要ないの? 金(GOLD)は?

 バランス型ファンドは今一つと言いましたが、では、最初からファンドに組み込んでいるものではなく、インデックス投資とは別に、分散の幅を広げる意味で、債券や金などのコモディティに投資をするのはどうなのでしょう?

 資産の置き場所として、債券や金などにも分散しておくというのは有りだとは思います。
 教科書的には、株価の動きと債券や金の価格は逆相関(株が上がれば債券や金が下がり、株が下がればその逆)と言われてきました。しかしながら、最近では必ずしもそうとは言えません。
 例えば、現在の米国は、中央銀行の利上げの影響で、株価も債券価格も下落し、多くの投資家が資金を現金にしている状態です。 また、金は金で独自の動きをしているように見えます。
 分散と言う点では投資の意味はあると思いますが、それぞれにリスク(特に金などコモディティの動きは読みにくいです)がある点には注意が必要です。

 ただ、債券は比較的低リスクと言われます、そして、債券型の投資信託、ETFなら少額から投資をすることができますが、これらはどうでしょうか。
 確かに債券は株に比べると値動きが少なく、下落するときも株よりも下げはマイルドです。株だけに投資しているよりも精神的に安心という面はあります。
 ですが、値動きが少ない分ドルコスト平均法(積立)のメリットを生かしにくいです。価格が下がったところで買うことで平均取得単価を下げるという効果が薄れるからです。
 また、信託報酬などのコストもかかります。株式型の投資信託よりも安いというわけではありません。
 個人的にはあまり魅力的ではないように思います。

 では、まとまった資金があり、投資信託などを積み立てるのではなく一括投資で、利率の高い外国債を購入する(国内の債券は利率が低いです。特に国債)のはどうでしょう。満期まで持っていれば、価格の下落リスクを気にすることなく(満期時には額面で償還されます)、高い利子収入が得られます。
 ただ、この場合は、為替のリスクをもろに受けることになります。(満期時点で円高に大きく振れると利子収入が吹き飛ぶ可能性もあります。(利率が高く、投資期間が長ければ、利子収入が大きいので為替による減収を吸収できますが)

 いずれにしても、最初は投資資金も少ないでしょうから、まずは投資信託(又はETF)で株式インデックスの積立投資をし、他の投資は、勉強をしてから、と言う方が良いように思います。

Q 「下落相場は買い場、買い増しすべし」って聞いたけど?

 株価が下落したところでうまく買うことができれば、平均取得単価を下げることができ、その後の値上がりによって、資産の増大につながります。
 ですので、毎月の積立にプラスして、下落局面でいつもより多く買う、という手法が考えられます。

 ですが、2つ問題があります。

 一つは、買い入れのタイミングがそこで良いのかどうか、という問題です。ここが買い時と思ったら、そこからさらにどんどん下がってしまったり、逆にまだもっと下がるだろうと思っていたら、上がっていってしまってタイミングを逃したり。
 そもそも相場の先行きが分からないから積立をしているわけです。

 もう一つは、メンタルの問題です。こちらの方が課題として大きいと思いますが、相場が下がっていって、損失が拡大している(又は儲けが減っていっている)、そんな状態のときに、さらに買い増しする勇気があるのか、ということです。買い場と言われるのは大きく相場下がっているようなときです。「投資なんかしなければ良かった」「もう投資はやめようか」と思っていても不思議ではありません。取りあえず、我慢して積立をそのまま続けられれば御の字かも知れません。

 長期投資において、下落相場で買い増しすること自体は悪いとは言えませんので、やるのであれば、自分の勝手な思い込み周りの意見を鵜呑みにして買ってしまうのではなく、ここも客観的なルールを作って機械的に買い増しするのが良いと思います。

 例えば、「マイナス5%ルール」というのを提唱している方がいます。【投資塾】の「ゆう」という方です。この方法は簡単に言うと週ベースで5%以上価格が下落したら買い増しするという方法です。週ベースで5%も下落するというのはめったにありませんが、5%という基準を設けることで、感情に左右されることなく、少ないチャンスをものできるというものです。詳しくは、下のリンク先の動画をご覧ください。

 【投資塾】知らないより知っていた方が役立つ話 
 【-5%ルール】個人投資家へ絶対に伝えたい投資術<前編>

 この方は、過去の膨大なデータを丁寧に分析して投資に役立つ情報を提供されています。
 最初はちょっと取っつきにくい感じがするかもしれませんが、非常に真摯に取り組まれていて、とても参考になると思っていますので、上で紹介した動画だけでなく、この方の他の動画も是非見てみてください。

Q 為替の影響は考えなくて良いの?

 インデックスの積立投資で海外の株式に投資する場合、海外通貨建ての取引となりますので、当然、為替の影響を受けます。
 株価、インデックスの上げ下げだけではなく、為替の動きによって収益(損失)が変わってきます

 例えば、現在は大きく円が下落(ドルが高騰)しています。現時点でドル建てで利益が出ていたとしても、将来円高に振れた場合には、ドルの価値が下がるわけですから、円に換算すると、当然利益も減少、下手をすると損失がでる可能性もあります。
 現在のこんな円安局面で外国株に投資して将来大丈夫だろうか? ということですね。

 投資信託、ETFには、「為替ヘッジ」という商品があります。詳しい説明は省略しますが、為替の先物など別の取引を加えることによって、為替リスクを減らそうとするものです。
 では為替ヘッジを付けておけば万々歳かというとそうとも言えません。

 為替ヘッジは別の取引を付加するわけですから、そのための資金がコストとして必要になります。これがそれなりの率になります(該当国同士の金利差によって変動しますが)。

 また、為替の変動は損失を生むリスクもありますが、逆に利益を生む可能性もあります。先ほどの例の逆ですね。円高から円安に振れる局面では、利益が得られます。為替ヘッジによって、リスクが抑えられる代わりにこの利益が得られる機会を失うことになります。

 上の項目で紹介した、投資塾のゆうさんが、1997年から2020年のデータを分析し、米国株の積立投資における為替の影響を調べられていますが、結論としては、「投資成果の大部分は株式利益によるもので、為替の影響度は時間経過と共に逓減していく。」と言うものです。つまり、積立期間が長期になれば、為替の影響はあまり気にしないで良い、ということです。
 詳しくは、こちらの動画を参照してください。

 個人的には、長期における為替の動きも予想するのは難しいのですし、パフォーマンスが落ちるのは明らかですので、コストをかけてヘッジするのではなく、為替のことは気にせず、機械的にコツコツ積立をするのが良いのかな、と思っています。

Q 株よりもFXの方が手軽に儲かりそうなんだけど?

 はい、私もそう思っていた時期がありました。
 随分昔になりますが、そう思って手を出し、ビギナーズラックで結構な儲けを得、簡単に儲かるじゃん、と思って取引額を増やしていったところで痛い目に遭いました。あるあるですね。

 FXは、「外国為替証拠金取引」と言い、その名の通り為替=通貨の売買なのですが、証拠金を業者に預けておき、購入代金を即払うのではなく、買ってその後に売った後の差額を決済するというような仕組みです(もちろん先に売っておいて後から買うことも可能)。
 昔からある商品ですが、最近よく宣伝を見るような気がします。

 FXは、差額決済という性質上、少額の資金で大きな取引ができます。また、証拠金の何倍までの額の取引ができるかというのをレバレッジで示しますが(株で言うレバレッジとはまた違います)、国内の業者の場合、上限は25倍です(10万円の証拠金で250万円分の取引ができる)。海外事業者の場合は、1000倍という例もあるようです。
 少額資金で始められるという意味では手軽と言えば手軽ですが、少額で大きな儲けが期待できる一方で損失も大きくなるわけですから、逆に投入した資金をすべて失うようなリスクもあります。

 FXは総論で説明した「投機」のうちのひとつで、株(インデックス)のように長期でみて経済が発展する限り値上がりが期待できる、長期でコツコツ投資していれば儲かる確率が高い、という類のものではありません。様々な要因でレートが変わり、急激な動きをすることも少なくありません。それだけに素人が勝ち続けるのは難しいと思います。
 FXこそ、冷静な判断で損切り、利確のできる強靭なメンタルが必要だと思います。

 また、「FXはゼロサムゲーム」ということも言われます。誰かの儲けは他の誰かの損によって賄われている、プラスマイナスゼロ、という意味です。FXの世界には凄腕のトレーダーもひしめいているわけですから、そのような中に伍して勝っていくのは厳しい道です。自動売買ツールのようなものもありますが、それで勝てるほど甘い世界ではないと思います。

 FXをやるなとは言いませんが、素人がやるのであれば、お小遣いで楽しむという程度に留めておくのが良いと思います。これで資産形成を図ろうとは思わない方がよいです。

Q 不動産投資はどうなの?

 総論の記事で、株と並んで、投資の類型として例示した不動産投資ですが、これはどうなのでしょうか?
 株よりも効率よく儲けることができるので、不動産投資の方がおすすめという人もいます。

 私自身はやったことが無いので、何とも言えないのですが、少し調べた限りでは、相当勉強をして真剣に取り組まないと難しいと感じています。

 不動産投資にもいくつかのタイプがあるとは思いますが、例えば、賃貸用不動産を入手して家賃収入を得ると言う場合を考えても、そもそも物件自体が良質なのかどうか、物件にかかる税金の関係、修繕などにかかる管理的コスト将来的な物件の価値、などなど、これらがどの程度の水準なら適正なのか、利益が期待できるのか、素人ではなかなか判断が付きにくいと思います。

 また、不動産関連の業界は生き馬の目を抜くような世界です。カモネギを口空けて待ち構えていることも多いでしょう。業者の言いなりになるのは大変危険です。総論でも書いたように、利益、リスクの中身が理解できていない投資に手を出すのはやめましょう。
 私のところにも投資用のマンションを買いませんかというセールスの電話がよくかかってきていました。今は、損失が出ていてもその分節税になり、将来的に資産が残ります、という触れ込みですが、この手の話で利益が出だという例は聞いたことがありません。

 儲かる話というのは、こちらから探してに行っても簡単には見つかりません、まして向こうからやってくることは無いと思いましょう。向こうからやってくる儲け話というのは要注意です。

 不動産投資に取り組むのであれば、本当にしっかりと勉強をして性根を入れてやる必要があると思います。片手間にやるようなものではないと私は思います。

最後に

 ざっと思いつくような疑問について解説してみましたが、参考になったでしょうか。

 次回はドルコスト平均法について、その欠点などを含めてもう少し書いてみたいと思います。(2022.10.19 ドルコスト平均法について記事を書きました。こちらを御参照ください。)

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