投資について総論的に書いた前回の記事で、できるだけリスクを小さくして一定のリターンを狙うのであれば、分散型の商品(インデックス連動が手軽)に少しずつ(例えば毎月一定額)積立投資するのが良いと申し上げました。
では、具体的にどのような商品に投資するのが良いのか、そして長期分散投資の際の注意点などについて、まとめてみました。
何に投資するのが良いか
投資信託かETFか
前回の記事で書いたようにインデックスに連動した商品であれば、多数の株に投資するのと同じで、1銘柄で分散の効果が得られます。
インデックスに連動した投資としては、投資信託とETFがあります。ETFは、投資信託が株式と同じように市場に上場されたものと考えてもらえば良いです。
ですので、投資の中身はほぼ同じです。
ETFのメリットとしては、後ほど説明する保有コスト(信託報酬)が投資信託よりも低い傾向にあるということです。(ただし、大抵はその差はそこまで大きくはありません)
一方で、ETFは多くの証券会社で自動で積立投資ができなかったり、分配金が自動で再投資されなかったり(再投資するには自分で買い付ける必要)、投資信託のように一度設定すればあとはほったらかし(勝手に口座から引き落とされる)と言うわけにはいきません。
また、投資信託の場合、一部のネット証券では、クレジットカード決済で投資信託の積立ができますので、クレジットカード利用によるポイントを得ることもできます。
ということで、投資のはじめとしては、ETFではなく、投資信託の中から選ぶのがやりやすいと思います。
全世界か 全米か それとも
次に、インデックス連動型の投資信託の中からどんな商品を選ぶか。
ネットで長期の積立投資におすすめの投資信託を検索すると色々とでてきますが、もう少し調べていくと、それなりのパフォーマンスが期待でき、なおかつ一定のリスクで収まるものとしては、ある程度絞られてくると思います。
大まかにいうと、全世界の株式を対象にした指標をベンチマークとするものか、先進国の株式を対象とするか、それとも全米の株式を対象とするか、もう一つ全米に近いものとして「S&P500」という米国の代表的な企業500社の株価を対象にしたものか、これらのどれを選ぶか、となってくると思います。
例えば、有名どころの人気投資信託としては、全世界型として「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」「ニッセイ外国株式インデックスファンド」、先進国型として「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス」「たわらノーロード 先進国株式」、米国型として「楽天・全米株式インデックス・ファンド」「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」「SBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンド」などがあります。
そして、これらのメリット・デメリットを比較した解説なども多数あり、それを読んで、それぞれの違いを比較検討していくと、考えれば考えるほど、一体どれを選べば正解なのか、訳が分からなくなってきます。
結論を言えば、これらに代表されるような「全世界」「先進国」「全米」「S&P500」のどれを選んでも不正解ではありません。
それはなぜか、どの投資信託についても、中身を見てみると多くの割合を米国株が占めています。
例えば、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」を見てみると、50カ国の株式を対象としていますが、構成比率の約6割は米国株です。
いやいや米国以外が4割も占めているじゃないか、こちらの方がが分散が効いているじゃないか、と思われるかも知れません。確かにそうです。ですが、残り49カ国で4割ですから、国によって差はありますが、米国以外の1国はせいぜい数%の比率です。仮に米国株のパフォーマンスが低下し、どこかの国が伸びてきたとしても、それで全体を支えられるかというと困難です。米国が失速すればどのみち足を引っ張られるというわけです。逆に言えば、パフォーマンスの多くを米国株に依存しているわけです。
もちろん、全世界と全米、2種類の投資信託のパフォーマンス、10年後、20年後の損益には当然差が出るでしょう。ただそれは、一方が大勝ちし、他方が大損するというようなものでなくて、ダメな時はどっちもダメ、調子が良いときはどっちも良い、その差は相対的なものだろう、ということです。
このことは「先進国株式」についても同じですし(米国の比率はさらに高まります)、全米の株式とS&P500という代表的500社の株式との関係も同じようなものです。
では、相対的であるとは言え、パフォーマンスに差が出るのであれば、どれが有利なのか。
それは誰にも分かりません。これまで米国が強かったようにこれからも米国が強いと思うのか(大きな不況を何度も乗り越えてきました)、いやいや米国1強はもう終わり他の国のパフォーマンスが期待できる、と思うのか。新興国についてどう思うか。
結局、えいや、で決めるしかないと思います。ここであれこれ迷って正解を探しても時間の無駄です。正解は無い(誰も分からない)のですから。 結果が分かるのは10年、20年後です。
大きな差が出るのは、「正しく」長期積立投資をするのか、しないのか、そこだと思います。
えいやで決めろと言われても、何か他に参考にするものないの? と言うことで、投資信託を選ぶ際に見ておくべき点として、コスト(主に信託報酬)、純資産総額、資金流入額 というものがあります。
また、同じ「全世界」の株式を対象とするインデックスファンドでもいくつか種類がありますので、そのうちのどれを選ぶのか、という問題もあります。
ただし、いわゆる先程あげたような、売れ筋と言われる人気のファンドであれば、これらの指標についても大きな差はないのですけれど。 一応確認するようにしましょう。
コスト(主に信託報酬)の問題
投資信託に投資する際のコストとしては、手数料、信託報酬がありますが、先程上げたような種類のメジャーなインデックスファンドの場合、たいてい購入手数料は無料です。ただし、信託財産留保額とと言う、売却する際の手数料が発生するものが稀にあります。
コストで影響が大きいのは、信託報酬です。これは、信託財産を管理・運用することに対する報酬で、インデックスファンドの場合、例えば「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」では、投資額に対して現時点で年率0.1144%ほどです。僅かな率に見えますが、保有期間中ずっと払い続けることになるので、小さいことに越したことはありません。ただし、インデックスファンドの人気商品は似たような率です。
また、投資信託には、隠れコストと呼ばれるものが存在します。別に証券会社が隠したりしているわけではなく、信託財産の管理・運用に伴う費用で実際に運用してみないと具体的な額が分からないため、事前には明示されていないというものです。事後に開示されるので、前年度の実績を参考にしましょう(「運用報告書」の「一口当たりの費用明細」で確認できます)。
この隠れコストを含めて、投資信託への投資の正味のコストを実質コストと呼びますが、ここで取り上げたようなインデックスファンドをざっと見る限り、信託報酬の何割か増しというレベルのものが多いです。例えば「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の場合、0.17%ほどです。ですが、中には隠れコストの高い(=見かけの信託報酬にくらべ実質コストが大きく膨らむ)ファンドもあるらしいので、一応気を付けておきましょう。
純資産総額
純資産総額とは、簡単に言うとそのファンドの規模を表します。ここで言えば、ファンドに組み入れられている株式の時価総額ということになります。
規模が大きいほど効率的な運用ができてコストの低減につながりやすかったり、逆に規模が小さすぎると運用に支障を来たし、最悪ファンドが手じまいされてしまう危険がある、などと言われます。
投資対象を選ぶ際の目安としては、30億と言われたり、100億と言われたりします。
有名どころの人気インデックスファンドは、これらの基準は大きく超えています。
なお、ファンドの規模は、設立されてからの年数にも関係しますので、次の資金流入額も併せてみてみましょう。
資金流入額
資金流入額はその名の通り、そのファンドにどれだけ資金が入ってきているか、つまり買われているか、です。もちろん、逆の流出もあります。そのときの市場の状況で投資信託を売却する人がいれば、その分、資金は流出します。流出よりも流入が多ければ、ファンドの規模は拡大していきます。
それなりの規模(純資産総額)があり、資金流出が少ないあるいは流入が多ければ、安定した運営が期待できるというわけです。
どの事業者(証券会社、銀行)を選ぶか
投資信託は証券会社のほか銀行で扱っていますが、取扱商品の数で言えば、ネット証券が圧倒的に多くの商品を取り扱っています。
また、銀行は株式は取り扱っていませんし、将来的に投資の幅を広げたくなった場合のことを考えると、コストの面や手続きの簡便さの面なども含めて、ネット証券を使うのが良いと思います。
一部のネット証券会社では、提携のクレジットカードで投資信託の積立ができるので、クレジットカード利用によるポイントも受けられるというちょっとしたメリットもあります。
証券会社というと敷居が高く感じる人もいるかも知れませんし、口座の開設も銀行よりも少々手間な気もしますが、そんなに難しいものではありません。
証券独特の用語などがあって、戸惑うこともありますが、必要なところだけ都度調べるなりすれば、大丈夫です。
では、ネット証券の中でどこが良いか、よく名前を聞くと思いますが、人気トップ2のどちらか、SBI証券か楽天証券のどちらかなら問題ないと思います。
ただ、ネット証券と言えども、オンライン上の操作画面が今一洗練されていないところが多いです。
一昔前というか無理やりオンラインにしているというか、そんな雰囲気です。
そんな中ですが、ネット上の画面は、楽天証券が比較的見やすいでしょうか。
長期積立投資を行うときに守るべきこと
余裕資金でやる
総論の記事でもくどく言いましたが、日々の生活に必要な資金とは別のお金で投資をしましょう。すぐに必要になるようなお金を投資で稼ごうとしてはいけません。ただでさえ感情に引きずられがちになる判断がますます冷静にできなくなります。
また、無理をして投資資金を捻出していると、生活資金が足りなくなった時に投資資金を取り崩すことになります。想定外の事態(大きな病気、事故など)でどうしても必要な場合は、仕方ありませんが(借金をするよもずっと良い)、度々投資資金から拝借するような家計管理では着実な投資につながりません。まずは、家計管理をしっかりして無理のない範囲でやりましょう。
愚直に積み立てる
毎月一定額を淡々と積み立てることが重要です。
株価の変動にあわせて売ったり買ったりしようとしないことです。
相場が大きく動く(動きそうな)ときには、周りがやたらと騒がしくなります。やれ、今が買い場だとか、もう天井をつけるとか。そういう声に惑わされてはいけません。
確かに、相場の底、天井にあわせてうまく出し入れできれば、利益は大きくなりますが、そんなことができるのは、様々な経験をして相場知り尽くした人くらいでしょう。
なので、相場の動きをピタリと言い当てることのできない一般人の私たちは、少しずつ積み立てていくのです。
損切り、利確をしない
損切りとは、相場の下落局面で、これ以上損を拡大させないために売却して、損失を確定させる行為です。短期投資ではとても重要です。この点を強調している解説も多いと思います。
ですが、長期投資では別です。
短期投資では、短期間での上昇(又は下落)を見込んで売買をするわけですから、相場が想定から外れて動くようなら、一旦撤退して戦略を練り直す必要があります。そうしないと許容限度として見込んでいた損失以上の損をだしてしまうことになります。
一方、長期投資では、そもそも、短期間での相場の上昇下落を予想しているわけではありません。それが難しいから長期の積立をしているのです。
なので、相場が下落したとしても、損切りしてはいけません。辛くても我慢です。10年、20年という長期でそれなりの利益が出れば良いわけですから、「こんなに下がった、損が膨らむ」とか心配せずに、「下落上等、安く買えた」くらいに思いましょう。
逆に、相場が上昇したときに売って利益を確定すること(利確)もしてはいけません。
そこからさらに上昇した場合、資産が増える機会を逃すことになります。
特に下落局面から相場戻ってきたとき、また下がるんじゃないか、ここらで利益を確保しておきたい、という気持ちはよく分かりますが、そこは我慢です。
何度も言っていますように、相場の上げ下げが当てられないから長期の積立をしているわけで、この先相場どう動くかは神様にしか分からないので、私たちは淡々と積み立てるのみです。
途中で止めない
上で書いたことと同じようなことになりますが、積立投資を始めたら絶対に途中でやめてはいけません。もちろん、人生何があるかわかりませんが、相場の上げ下げを見て、もう駄目だ、投資をやめる、とか思わないように、ということです。
リーマンショック級、コロナショック級の暴落が来て、30%、40%の下落があったとしても(積立をしていれば、少しは下落幅はましなはず)、我慢して、積立を続けましょう。
実際に大きな下げ相場では、多くの人が投資から撤退しています。その結果、その後の上げ相場で資産を増やす機会を逃しています。
これからまだどれだけ下がるかわからないのに、積立なんか続けられない、という気持ちになることもあるでしょう。でも、米国、あるいは世界の相場は、これまで何度もそのような危機から復活してきました。辛くても、淡々と続けましょう。
最後に
今回の記事は、あまり具体の商品名は出さずに考え方のような内容になりましたが、具体的な商品などは、この記事や他の方の意見などをもとに、御自身で考え、確認してお決めください。
色々と悩んで下さい。それが投資の知識を増やすことにもなります。
次回は、投資するにあたって疑問に思うようなことについて、私の考えをお伝えできればと思います。
(2022.10.15 記事にしました。為替リスクやFXなどにも触れています。参考にしてみてください。)
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