ドルコスト平均法は万能か? ~強みと弱み~

good-value / assets
Photo by Viktor Hanacek from picjumbo

 ドルコスト平均法とは、ある投資商品を購入する際、一括でまとめて投資するのではなく、例えば毎月など定期で一定額、少しずつ積み立てて投資をしていく方法です。
 こうすることで、取得単価の平準化を図ることができ、高値掴みすることを防ぎます。価格変動リスクを時間的に分散する方法とも言えます。

 投資機会を窺う必要が無く、単純にコツコツ積み立てをすることで効果が得られるので、初心者に向いた方法と言われますし、その通りだと思います。これまで3回続けて投資に関する記事を書きましたが(総論各論Q&A)、この前提で書いています。

 では、ドルコスト平均法は、どんな場合にも有効な万能な方法なのでしょうか、と言うと、もちろんそんなことは無くて、得意、不得意があります。 

ドルコスト平均法の強み

 冒頭で「高値掴みを防ぐ」と言いましたが、相場が下落するような局面でも、損失を抑えることができます。
 例えば、次の図をご覧ください。ある株が期間経過とともにこのような値動きをし、毎月一定額を積み立てて購入していたとします。

 積み立て始めてから株価は下がり始め、終盤になって回復してきましたが、積み立て終わりのタイミングでも始めの株価までは戻らなかったという例です。

 平均取得単価はおよそ点線のラインとなりますので、スタートの株価よりも下がっているにもかかわらず、最終的には損失ではなく、利益が出ています。
 スタート時点で一括購入していたとすると、かなりの損失が出ていました。

 ドルコスト平均法は、定額の積立ですので、高いときには少なく買い、安いときに沢山買う、ということになり、平均取得単価を下げやすいと言えます。

 ただ、出口付近で価格が戻らず、一本調子で下がっていくような相場では、一括投資よりは損失が少なく済むケースもありますが、どのみち損失は避けられません。

ドルコスト平均法の弱み

 ドルコスト平均法の苦手な相場というものも当然あります。

 ドルコスト平均法は一発勝負の高値掴みを防ぐことはできますが、ある時期の株価が結果的に高値であったとしても、そこを飛ばすわけにはいきませんので、一定量は買ってしまう(買わざるを得ない)ため、後から全体的にみると平均取得単価が上昇してしまった、ということが起こります。

次の図をご覧ください。

 スタート(積み立て始め)時点から株価は上昇しましたが、出口(積み立て終わり)時点で下落してしまいました。ただ、スタートよりも高い株価で終わっています。

 このケースでは、平均取得単価は、おおむね点線のラインとなります。つまり、最終の株価よりも平均取得単価が高くなってしまい、損失がでてしまいました。
 これは、高値となった辺りでも、購入した(せざるを得ない)ため、平均取得単価が上がってしまった結果です。
 スタートで一括投資をしていれば、それなりに儲かっていました。

 このように、出口付近で平均取得単価よりも株価が下がるようなケースでは、ドルコスト平均法で損失がでてしまいます。

実際どうなのか

 先に挙げた2つの例は、非常に単純化したモデルです。
 実際の株価はもっとジグザグした動きをするでしょう。
 例えば、過去の米国株なんかは、どこの時点を切り出すかにもよりますが、ざっくりとこんな感じではないでしょうか。(あくまでイメージですが)

 このような値動きであれば、ドルコスト平均法によって、平均取得単価を抑えつつ、大まかな上昇トレンドに乗って資産の増加を図ることができます。

 もちろん、スタート時点(地点A)で一括投資しておくのが、一番安く買えて資産の増加も一番大きいのですが、現在地が地点Aなのか、Bなのか、それともCなのか、過去を振り返ってみるまでは分からないわけです。
 仮に現在がBであれば、ドルコスト平均法なら取得単価を下げることができ、一括投資するよりも資産の増加が見込めます。

 一方で、超長期の投資(少なくとも20年以上)を考え、大きな大きなトレンドとしては右肩上がり、と言うことを信じるのであれば、どの時点でスタートするのであれ、一括投資をするのが有利ということになります。
 ただ、それなりの資金を一括投資して、その後の価格変動にメンタル的に耐えることができるか、と言う点が大きな問題と思います。

 いずれにしても、未来のことは分からないわけですから、ドルコスト平均法はリスクを抑えて収益を狙う手法としては優れていると思います。

ドルコスト平均法の別のメリット

 私は、ドルコスト平均法の別の意味でのメリットは、メンタルコントロール面で有利である、と言うことだと思います。

 上でも少し書きましたが、株価が下がってきたときには誰しも不安になります。長期の投資では大きな下げ相場を必ず経験するはずです。
 そんなとき、一括投資であれば、「こんなに資産が減ってしまった」「あそこで買わなければ良かった」「投資なんかするんじゃなかった」と不安を抱えながら、株価が上がることをひたすら祈るのみ、と言うことになります。

 ドルコスト平均法でも、不安や後悔が押し寄せるには違いないのですが、下がった分だけ安く買える、と自分に言い聞かせて、淡々と積み立てを続けるわけです。
 どのタイミングで下げ相場が来るのかにもよりますし、50歩100歩の差なのかも知れませんが、コツコツと積み立てている方がまだメンタルコントロールはしやすいのではないかと思います。
 少なくとも買ったタイミングが悪かったとかで、悩むことはないと思います。上げ下げに関係なく一定額を積み立てる、それしかできませんし、それがドルコスト平均法なのですから。

最後に

 以上の通り、ドルコスト平均法は強みもあれば弱みもあり、大きな収益を狙うにはベストではないのかも知れません。

 ですが、リスクを抑え、精神的にも安心感を持てる方法としては、他にはないものだと思います。
 とくに、投資の初期では、大きな資金を用意することも困難でしょうから、長期投資としては、コツコツ積み立てる以外には無いと思います。

 ただし、どんな商品にも向いているかというとそうとも言えないと思います。
 前回の記事でも書きましたが、債券のように価格変動がマイルドな商品には向きません。
 価格が大きく上下しながらも、出口に向かって価格上昇(長期のトレンドとして上昇)が期待できる、そんな商品に向いています
 ですので、将来のことは確実ではありませんが、株式のインデックス(全世界や全米)に向いていると言われるのもその通りでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました